その人は、まぁ物覚えが悪いというか、年相当なのだろうか? 全てにおいてあまり要領が良いとはいえない。世界で最も温厚な指導係の私ですら堪忍袋のテイルがブロークンしそうな状況に陥ること数え切れず。
しかし、繰り返しの修練を要する特技を持っていると知った私はもう少し根気良く様子を見ることにした。
ただし、我慢の御代は貴方の体験という名の通貨で払っていただく。
音楽方面に関しては大して知識も無く、せいぜいギターのコードを押さえてジャラジャラと鳴らす事が出来る程度の私。
相手は両手で鍵盤、両足でペダルを踏むという強敵――の可能性が高い。
とりあえずコッチの手の内は上記のように伝え、日ごろから疑問に思っていた2つの件に関して聞いてみた。
- 四分音符ってなんだ? 音の長さって嘘じゃね?
- 絶対音感ってなんだ? なんかピアノ限定なイメージがないか?
まず前者に関しては、なんとなくでやってるから良く分からない、という実に残念な返事が返ってきた。
音の長さと言われると厳密には分からないらしい。
まぁ私も音の長さではなく、せいぜいが手拍子するタイミングだと思っている程度なので文句は言えない。
次に後者に関しては、身の回りの音が全部音階になって聞こえるらしい、という何処でも聞く答えが返ってきた。
どうやらその人の知り合いに一人絶対音感を持つ人間が居て、聞いた音をピアノで弾けると言う。
素晴らしいサンプルだと思ったので、すぐさま次の疑問をぶつけてみた。
- 絶対音感持っててピアノ弾ける人に、触ったことない楽器、例えばギター渡したらどうなるん?
目の前の人間は少し考え込んで、無理でしょう、と答えた。
そらそうだ。
予想通りの回答に胸を撫で下ろしつつ、ドレミファソラシドのならびに関して云々という話をしてみたら、どうにも通じない。問い詰めたところ、鍵盤の周波数の並びは知らないと判明。
- ド→レ→ミ→ファ→ソ→ラ→シ→ド
- 1→3→4→ 5 →7→9→11→12
みたいに飛び飛びになっていると言うことを、初めて聞いた、と言っていたので、この辺で疑問を投げるのをやめた。
――子供の頃に鍛えないと絶対音感は身につかない
――生まれつきの才能だから云々
なんとも身勝手な噂だけど、本当に良く聞くし、本当に広く信じられていると感じる。
でもこれ大嘘だよな。
ガッチリと体得した得意な楽器がある状態でチェックしなきゃ、絶対音感なんて有るかどうか分からないだろう。
各種音感チェックサイトなどで酷い点数しか出ないのは、単に私がピアノの鍵盤のどの位置からどんな音が出るのかを体得できていないだけなのだ。
触ったこともないようなデバイスで才能を測ろうとするのは大間違いだ。
よし!
納得した。
口笛で入力できる音感チェックがこの世にあるなら是非やってみたい今日この頃。
私が考えるまでも無く分かりやすいサイトがぐぐると一番上に出てくる今日この頃でもある。
・絶対音感の功罪